おでん求めて
雨の涸沢

部屋がトイレに近かったせいか、夜中もパタパタとトイレに走る足音が耳につき(スリッパで廊下を走るのは止めましょう!)、明け方は強い雨音で目が覚めます。「えっ、雨か〜?」「けっこう降ってるなぁ」「予報では朝方だけのようやけどなぁ」「もう少し、様子を見ましょか」などと、布団の中でモゾモゾ。この時点で北穂へのテンションレベルは約80%に降下。2日コース組は、橋は橋でも、本谷橋ではなく横尾大橋を渡った所で折り返すつもりになっている様子です。すぐ、そこやんか!

横尾山荘前とりあえず朝食を食べようと起き出しますが、窓の外を見るにつけテンションレベルはどんどん下がるばかり。涸沢まで上がって様子見で上に行くかという話も出ますが、結局涸沢で引き返すことになりました。食事をしている間も雨は降り続いていますが、明け方より少しは小雨になっているようです。

涸沢折り返しと決まれば行動は早く、予約していた北穂の小屋をキャンセルし、ここ横尾山荘にもう1泊お願いして大きな荷物を置かせてもらいます。準備をしている間も外は雨、雨、雨。2日コース組がどこまでお見送りしてくれるのか分かりませんが、今回最屏風岩後の全員での記念写真を撮ったら、7:10 雨の中傘をさして出発です。早い時間に出たパーティーを除くと、この雨の中を山へ入る人はあまりいないようです。お天気ならこの時期渋滞と言われている道も空いています。段々と屏風岩の壁が近付いてきました。後もう少しで、屏風岩の全景が見られる岩小屋跡、という地点で2日コース組が引き返し、ここからは5人で涸沢へと向います。

7:30 岩小屋跡で屏風岩見学休憩。さすがに今日は張り付いているクライマーは見えませんね。雨霧に見え隠れする壁は、それでも目の前に毅然とそそり立ち、その迫力が伝わります。あの壁に挑むのは分かるとして、どうやってそこまで辿り着くのでしょう?という質問に、リーダーが「あっちの裏側からいくつ本谷橋かルートがあるんですわ」と指差し確認で解説してくれます。この雨のせいでしょうか、壁のほぼ中央に細い滝が流れ落ちています。

ここまではほぼ平らな道でしたが、そろそろ登り坂が出てきます。同時に下山の人が多くなってきました。こんな雨の中上がるの〜?という目で見られながらも、どんどん先に進みます。どうせ涸沢までと思うと、こんなお天気でも歩けるもんなんですねぇ。今回はお留守番のK2リーダーによれば、「涸沢までなら、台風でも歩けるやん!」だそうでございます。

沢の音が近付いてきました。8:15 本谷橋に到着。休憩場所の定番ですが、屏風の向こうに北穂雨も強くなってきました。もう少し雨が避けられる場所を探して、ここは早々に引き上げます。ここからはいよいよ本格的な登りです。橋を渡って直ぐに階段状になった岩の道をエンヤコラと上がって行きます。この間も上からはどんどん下山者がやって来て、これが噂のスレ違い渋滞か・・に近い状態も体験できました。

スレ違う人に「紅葉はどうでしたか?」と聞くと、「う〜ん、答えない方が良いかなぁ」と笑顔でお返事されてしまいます。期待して良いのか悪いのか、ビミョ〜。8:45 道脇のちょっと広がった路肩部分にザックを置いて休憩です。雨は降ったり止んだりの繰り返し。そろそろ前方の空に北穂や涸沢岳の頭が見えても良ウラジロナナカマドい頃ですが、なかなかガスが晴れません。周囲の木々もガスに巻かれたり晴れたりでよく分かりませんが、横尾辺りよりはだいぶ色づいている様です。道の端には赤く実をつけたウラジロナナカマドでしょうか。まだ濃い緑の葉に、赤い実だけが鮮やかに映えています。

9:30 Sガレの手前でちょっと休憩。周囲は霧であまり良く見えません。遠くにヒュッテの赤い屋根が小さく見えてきました。ここからが長い!という事なので、見えたからとぬか喜びをせず一歩一歩進みましょう。今までひっきりなしにスレ違ってた下山者もここまで来ると一段落したようで、道も歩き易くなってきます。

Sガレガレ場を過ぎてようやくカール下に辿り着きました。さて、ここで着いた!と安心してはいけません。意外とここからヒュッテまでの坂がキツイんですよねぇ。遠くからは建物が見えましたが、カール下に来ると直下のこんもりとした木々でヒュッテが見えなくなり、視界から目標が消えてしまうと余計距離が長く感じられます。

残念ながら穂高の稜線はガスに隠れてますが、カールを覆うガスは時折流れ、色づいたヒュッテ直下の紅葉に励まされながら、黒い岩がゴロゴロする道を上がって行きます。10:10 ヒュッテと小屋の分岐まで来ると、5人の位置がかなりバラけてきました。先頭に売店の席の確保を託して、ゆっくりと登りましょう。振り返ればヒュッテ直下正面の山肌も、見下ろす沢沿いにも深い秋の気配が漂っています。見事な・・とまでは言えませんが、所々黄葉が盛りで、これにもう少しナナカマド類の紅が増えると、これぞ錦秋の輝く涸沢カールになるのでしょう。

最後にヒュッテ前の大階段をひと登りして、お疲れ様でした。10:20 涸沢ヒュッテに到着です。この雨で停滞している人が多いのか、屋根のある売店のテーブル席は満杯で、3人分の席を確保するのが精一杯。1人また1人と到着する間に、なんとか5人座れるスペースが出来ました。

横尾山荘でお弁当を頼んだのですが、ここのお弁当はパンとツナソース・ジャム・ピーナッツバターにレモンティーのパックと涸沢ヒュッテいう珍しい洋風弁当。爽やかな秋空の下、紅葉を愛でながらのピクニックにはもってこいですが、雨の中こう涼しい(寒い?)と、や〜っぱ、おでんっしょ!という訳で、パンはおやつに回して、おでんとラーメンを注文します。おっと、生ビールも忘れてはいけません。これぞ正しい涸沢での過ごし方。すっかり居酒屋状態でお昼をしていると、雨はどんどん強くなり、おまけに風まで吹き始めました。まったく、なんちゅう天気や!

テーブルがご一緒だった関西から来られたらしい女性3人組は、昨日からお泊まりの様でしたが、明日に期待してもう1泊していくとのこと。予備日が取れる人は良いなぁ。雨脚がちょっと弱完全武装まってきました。今の内に下りましょう。最後に熱いコーヒーを飲んだら、11:20 完全装備で出発です。

登りは傘をさしていたのでちょっと視界が遮られていましたが、傘なしで歩いてみると黄色の中にそこそこ赤味もさしているのに気が付きます。苦労して登ってきた道も下りはアッという間。12:25 本谷橋手前で一休み。この時間になって、登りの人が増えて来ました。今朝上高地に入った人たちでしょうか。中には40人近いパーティーが、無線を持ったガイドさん?に率いられ2つのグループに分かれて上がって来ます。今日の涸沢はさぞかし賑やかな事でしょう。

カール下13:05 本谷橋到着。登る人、下る人が行き交い、時には良い情報交換の場になっているようです。大勢の人がガヤガヤと話している中、色白のたおやかな感じの単独女性が、大きなザックを背負ったままひっそりと岩に座り、サイドポケットから飲み物を取り出して、水量の増した川の流れを涼やかな眼差しで見つめながら一口、二口。またひっそりと立ちあがって横尾方面へと去って行きます。周囲の喧騒をよそに、そこだけ静かな時間が流れているようで、後から聞くと他のメンバーもちょっと気になってたとか。う〜ん、こういうステキな山歩きがしたいものです。

涸沢テント場雨がちょっと小降りになって来ました。先を急ぎましょう。

歩き出すと雨がまた強くなって来ました。もう、ザーザー降りです。道も沢状態になり、石の頭を踏んでまるで渡渉している感じ。往きに屏風岩で見た細い滝も、今はドウドウと落ちる立派な滝になっています。ズブ濡れになって 14:15 横尾山荘に戻って来ました。

早速、雨具やスパッツ諸々乾燥室に干しに行きますが、後から後から濡れたものが吊るされる為、じぇ〜んじぇん乾きません。ドアを開けると、ムっとするくらいの湿気が乾燥室に充満し、館内放送では「乾燥室が一杯なので、ほどほどに乾いたものはヒュッテで引き上げてください」とのお願いが流れます。ほどほどどころか、まだボトボトだけどこれ以上置いても却って湿るだけ。諦めて取り込みます。

予定を変更したので、明日はゆっくりと出発です。暗くなっても続々と雨具にヘッドランプのグループが到着し、廊下はまだザワザワとしていますが、昨日の分も取り返そうと早々に横になります。さて、明日のお天気はいかに?!


 今日のお時間
7:10 横尾山荘−7:30 横尾岩小屋跡(休憩)−8:15 本谷橋(小休憩)−(休憩2回)−10:20 涸沢ヒュッテ 11:20−(休憩1回)−13:05 本谷橋−14:15 横尾山荘
 

 今日のお風呂    横尾山荘 



 3日目(横尾〜上高地)へ   初日(上高地〜横尾)へ



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