北岳2日目
北岳山頂へ

朝3時半、そろそろ周りがザワついてきたそのさなか、夢の中で何かに追われているのか部屋に響く叫び声。これで全員目が覚め、丁小屋の前で記念写真度良い目覚まし時計となりました。昨日の受付時に朝食は4時半からと聞いたので、当初はお弁当にするつもりでしたが、食堂でちゃんと食べる事にします。

宿泊者が多いのできっと並ぶだろうと4時頃から食堂に下りてみますが、誰も居ません。な〜んだと部屋に戻り、15分後に下りても数名が椅子に座っているだけ。南アルプスは、のんびりなのね。北アルプスの混んだ小屋だと、朝から殺気立ってる雰囲気ですから。

4時半キッチリに食堂のドアが開き、一番乗りで窓際の席をとって朝御飯です。明るくなってくる窓の外を見ながら、期待に胸を膨らませます。ご飯をしっかり食べ、水洗の気持ち良いトイレを済ませたら外に出て出発準備です。普通なら大きなザックは一旦持ち出して小屋に預けるのですが、部屋に置きっぱなしでイイというのは時間が短縮できてとっても便利。遠くに雲がポツンと浮かんでるだけの、快晴の夏空が広がる下、記念写真を撮ったら 5:10 イザ出発です。

草スベリを歩く白根御池の側にある草スベリコースの入口から、昨日の下見で噂の「雲をつくような」坂道へと入ります。直ぐ前を大きな荷物を背負った高校生のグループがゆっくりと歩き、その後をついて行きますが、お先にどーぞと道を譲られます。まぁ、高校生に道を譲ってもらうなんてと感激しながら、先に行かせてもらいます。

5:25 歩き始めてまだ15分ですが、衣服調整と称してちょっと休みます。昨日広河原から小屋に来る間、抜きつ抜かれつしていた山ガール3人が、後ろから上がってきました。食事はいつも小屋のデッキのカウンターで自炊。新しそうなバーナーやコッヘル類を駆使して、美味しそうな山食を作る雑誌から抜き出てきたような元気な山ガール達です。今日もお洒落なウェアに身を包み、嬉しそうに上がってきます。今度はこちらが道を譲る番となり、先に行ってもらいましょう。

草スベリの急斜面5:50 お花の写真を撮る合間、またまた休憩です。なにせ急な斜面ですから、こまめにかつ短く休憩を取ることにします。今までは「草スベリ」の名に相応しく、登山道の周囲はほんとに草だけでしたが、この辺りから小高い木々も出て来ます。木陰があるとやはりホっとしますね。

6:10 行く手の斜面の向こうに、ようやく目指す北岳の山頂が見えて来ました。つまりこれまでは見上げても斜面しか見えなかったって事で、まぁ、一体どれだけ急やねん!という感じです。

6:45 出発してから4回目の休憩です。この時間になると、上の小屋から下りて来られる人ともすれ違うようになって来ます。下りなので口は「ガンバって下さ〜い」と余裕なのですが、何しろこの急な斜面を下りていくのですから、余裕な口とはウラハラに、顔はけっこう緊張しています。

小太郎尾根付近から7:00 右俣コースとの分岐に到着。休憩を4回もとったわりには、小屋から2時間弱で着いてしまいました。はや!右俣コ−スから上がって来る人、上から下りてくる人で狭い分岐に出ると急に人が多くなります。ここから小太郎尾根へ上がる道の両脇には、シナノキンバイの黄色が鮮やかなお花畑が広がり、またそのお花畑を眺める人で、道は人で一杯。

振り返れば、富士山の頭がちょっと見えて来ました。小太郎尾根へと高度を上げて行くにつれ、富士山が徐々にその姿を現します。7:25 小太郎尾根の分岐に到着、一気に視界が広がります。富士山は裾野へと広がる曲線が雲の中へと続き、同じ南アルプスの仙丈ヶ岳や甲斐駒ケ岳はもちろん、遠く北アルプスの槍ヶ岳の穂先もうっすらと望めます。しばし、この雄大な眺めを楽しんだら、先に進みましょう。

急な上りはもう終わり。眼前に迫る北岳を見ながらの快適な稜線歩きです。途中、ちょっとしたクサリ場を越えて、8:05 肩の小屋に到着、標高3000mです。予定より大分早いので、たっぷり休憩しましょう。北岳といえばキタダケソウ。自生の花はも北岳にキタダケソウう終わりだそうですが、肩の小屋が面倒を見ている?一株がまだ花をつけているというので、見に行ってみます。柵の中で白い花を咲かせているキタダケソウは、確かに花びらの形がちょっと独特です。

植物観察を終えたら、最後のヒト踏ん張り。8:20 山頂へ向け出発です。さすがに今までの緑濃い道ではなくなり、岩稜が続く道となりますが、大きな岩陰に小さな花が精一杯咲いています。8:40 両俣小屋への分岐で一旦休憩。夏山は水分もですが、同時に塩分も必要と由緒ある岩塩が回ってきたり、そうかと思うとエネルギー補給には甘いものが必要と、黒糖やチョコが回ってきたりで、口の中はしょっぱいのか甘いのか分からない状態になってます。

行く手にはいよいよ山頂が見えて来ました。まぁ、見えてから長いのがよくある事ですが、ゴールがそこまで見えているというのも励みになります。石につけられた矢印を良く見て上がる事約30分。9:20 標高3193m 日本第2位の山 北岳山頂に到着です。ヤッター!残念ながら大分雲が湧いてきて、富士山は頭が隠れてしま肩の小屋ってますが、それでもグルリと360度何にも遮るものがなく見渡せます。やっぱり高いところはイイなぁ〜。しばらくあっちの山はナニ、こっちの山はナニ・・と山頂を一周しながら眺めを楽しんでいるうちに、なんだかお腹が空いてきました。肩の小屋に戻って、早お昼にしましょう。

9:50 名残惜しくはありますが、山頂を後にします。どんどん人が上がってくるので、すれ違いに注意しながら岩稜の道を下ります。10:30 肩の小屋に戻って来ました。さぁ、お弁当タイムです。日陰がないのがちょっと難点ですが、念願だった北岳登頂を果たした満足感と共に頂くお弁当の味は、なにより美味しい!

しか〜し、お弁当を食べて空腹が満たされたら、次は冷たいビールが飲みたい!と更なる欲望がフツフツと湧いてきます。嗚呼、人間はなんて欲深いんでしょ。そうなったら、これはもう急いで下りるしかありません。

11:05 そそくさとお弁当がらをザックに入れて、下山開始です。再び快適な稜線を戻って、11:35 小太郎尾根分岐に下りて来ました。周囲は雲におおわれ、朝見た景色とはすっかり様変わりしています。見ている間にも雪田跡で雲がどんどん沸き立ち、富士山はまったく見えなくなってます。休憩もそこそこに、更に下ります。12:00 右俣と草すべりの分岐に来たら、そのまま直進で右俣コースを下ります。

さっきから上空をヘリが飛んでいます。方向的にはバットレスやこれから向かう大樺沢雪渓あたりでホバリングしているようですが、特にレスキュー隊が地上に降りてくる雰囲気でもありません。遭難者を探しているのでしょうか。前後の登山者も全員立ち止まって、ヘリを注目しています。ヘリの音を聞きながら右俣コースを歩きます。12:15 ちょっと休憩。どうやら探しものは見つからずに、ヘリは去って行ったようです。

右手に見える山頂がどんどん高くなって行きます。そしてクライミングで有名なバットレスの全景が見えてきます。つづら折の道は9名が一斉に休むスペースがなかなかなく、あった!と思ったら先客が居たりして、なかなかゆっくり休めません。12:40 腰かけるのに丁度良い石がゴロゴロしている広場(雪田跡)で、ようやくザかんぱ〜い!ックを降ろして休憩です。だいぶ遠くなった山頂をふり仰ぎ、さっきまであそこに居たんだなぁ〜としみじみ・・。ちょっと雲に隠れてしまいましたが、最後に北岳をバックに記念写真です。

12:55 とりあえず、二俣まで下りましょう。長い下りでそろそろ膝もお疲れのようです。あっちでズリ、こっちでズルと靴の滑る音がします。13:15 膝休憩と称して、休憩。屈伸運動をしてちょっと膝の緊張を和らげます。樹林帯に入り、同じような景色ばかりでそろそろ下るのにも飽きた頃、13:45 大樺沢雪渓沿いの二俣に到着です。残す所あと30分程度で白根御池。はぁ、やれやれ。と、またまた、ヘリが飛んで来ました。八本歯のコルの下辺りから雪渓上空を暫くホバリングして、また帰って行きます。もしかして、遭難者探しではなく何かの訓練でしょうか。

二俣からは、木の根がはびこる道を軽くアップダウンしながら歩く事30分。14:40 ビール小屋・・じゃなくて、白根御池小屋に無事帰って参りました。朝5:10に出発して、実に9時間半の長丁場。はい、どちら様もお疲れ様でした。今日はもう歩く事はありません。バンザ〜イ!という事で、待望の生ビールです。

手持ちの焼酎も出てきてもう一度乾杯。雨がポツポツ降ってきたら、中の大部屋へ移動して更に乾杯。夕食を挟み、もう一度大部屋に戻って宴は続きます。

山頂パノラマ

 本日のお時間
5:10 白根御池小屋 −(休憩4回)− 7:00 右俣・草スベリ分岐(休) − 7:25 小太郎尾根出合(休)
−8:05 肩の小屋 8:20 − 8:40 両俣小屋分岐(休) −9:20 北岳山頂 9:50 − 10:30 肩の小屋 11:05
−11:35 小太郎尾根出合(休) − 12:00 右俣・草スベリ分岐 −(休憩1回)−12:40 雪田跡 12:55
−(休憩1回)− 13:45 二俣(休) −14:40 白根御池小屋

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