
明け方に強い雨音を聞いて、これは1日雨の中の歩きかな〜と思っていたら、夜明けと共に段々と雨脚も弱まり、着替えて外に出る頃には上手い具合に止んでいます。予定より早く起きてしまったので、小屋の外で昨日準備した朝食代わりのカップ麺をいただくことにしましょう。なんせ、今朝は最初に高度差300Mの登りが待ってるのです。朝一番からシャリバテじゃぁ、シャレにもなりません。
朝のお散歩を楽しむ方々の隣で、おだしの香りを漂わせながら、どんべえ天ぷらそばや緑のたぬきをツルツルっとほおばります。「もう、朝ご飯?おいしい?」と笑顔で声をかけられたりしつつ、おそばの朝食を済ませたら、出発しましょう。
本日お帰りの方と、体調の加減で先に栂池へ回られるメンバーに見送られ、バスで登山口まで入ります。歩けば30分くらいの車道を、バスはものの10分ほどで登山口に到着。目印は風吹大池登山口のバス停と、ブナの大木ということですが、ブナの方は一見枯れかかっているようで、根元から数メートルの高さしかありません。それでも枝の先には青々とした葉が繁り、生命力の強さを示してくれます。
6:20 登山口から噂の急登に取りつきます。う〜ん、確かに朝からこれはキツイ〜!黙々と高度を上げるものの20分経ってあえなく休憩です。見上げれば行く手には、左右に延びる笹目尾根が遥か彼方にそびえています。とりあえずあそこまで出ないと、この登りは終わりません。まぁ、予定より早い出発ですし、ゆっくり1歩1歩上がっていきましょう。
「坂の途中で休むの、嫌いやねん」というリーダーの一言で休憩も短め。よっこいせと再び登り始めて20分、ようやく笹目尾根の稜線に出てきます。この辺りまで来ると、爽やかな風が大汗かいた身体に心地良いですね。これから向かう道脇の大木には、赤ペンキで「↑風」、来た道を振り帰れば下りに入る脇の大木に「↑蓮」、左右の木のお腹には「××」が大書され、判じ物のようですが、逆に非常に分かりやすいっちゃぁ分かりやすい、道標になっています。
ここからは、樹林帯の中緩い登り下りを繰り返し、途中雨飾山を眺めたり遠く日本海を望みながら進みます。ただ、道が狭い為なかなか休憩にちょうど良い場所が見つからず、ひたすら歩くのみで後ろの方から、「休憩したいな〜、景色眺めたいな〜」の声が出ますが、止まりません、いや、止まれません。
段々と溜まる疲れを癒してくれるのが、道脇に可憐に咲く山の花々です。イワカガミのピンク、ゴゼンタチバナやイワハゼの白、ミヤマリンドウの紫が眼を楽しませ、あともう少し!と励ましてくれるようです。7:50 少し道幅のある場所でようやく休憩です。あ〜、ヤレヤレ。
元気が出たところで、先に進みましょう。最初の急登を思ったより早いピッチでこなしたので、時間的にもなかなか良い調子です。この辺りから小さな雪田が現れ、その近くには雪解けの冷たい水のせいか、この時期でも水芭蕉がたくさん咲いています。麓のほうは育ちすぎた大きな葉しか見られませんでしたが、上の方は尾瀬まで行かなくとも十分楽しめる水芭蕉の群生です。
雪の上を歩けば心なしかヒンヤリと涼しく、キックステップで雪を蹴散らしながら歩くのは、子供時代に戻った様で楽しいものです。道は湿地となり、場所によっては靴がズブズブと沈むくらい泥沼化してますが、行く手行く手に水芭蕉が見えると、思わず「きれいー!」の歓声が起こります。
泥の道に足を取られそうになっては、オット!と態勢を整え、水芭蕉やギンリョウ草が群生してれば、足を止めて眺めたりしている内に、道は開けた草原に出てきます。この辺りに来ると名前の分からない花の前で数人集まり、あれでもない、これでもないと協議しきり。先を行くグループとちょっと離れてしまい、あちらこちらに群生する水芭蕉の中で、「え〜、どないしてそっち行けばええの〜?」
広々とした草原には、水芭蕉の他にもミヤマリンドウ、チングルマ、ワタスゲ等の花が咲いています。折からガスが舞い降りてきて、何やら幻想的な雰囲気になって来ます。風吹大池付近には湿地帯が多いということで、この先もまだまだ湿原が続く様です。草原を抜けてしばらく行くと、8:40 栂池天狗原から来る道との分岐に到着。ここまで来れば風吹大池ももうすぐです。

分岐を過ぎると、木道の
道になり風吹天狗原に出てきます。ここはワタスゲが木道沿いに一面に咲いていて、ストックが触れるたびにフワフワとしたワタがストックにまとわり付いてきます。誰かが埋もれる様にして咲く小さな赤紫の花を見つけました。「トキソウかしら・・?」 ピンポーン!まぁ、実はあとで分かった事なのですが、それにしても皆さん、よう見つけはるわ〜。
風吹大池を一周する木道が向こうから延びて来て、ここを入れば湿原のもっと奥まで行けるのですが、お腹も空いて来た事ですし、山荘でブランチ♪なんぞというお洒落なものをいただこうという予定なので、このまま山荘方面の木道を歩きます。
風吹天
狗原を渡り切ると、急な階段状の下りになり、木々の合間から風吹大池が見えてきます。下りきった所からまた木道を進むと、ひっそりと静かに湖面を抱く風吹大池が、目の前に現れます。途中、つり鐘があってどこの誰に来訪を伝える為なのか分かりませんが、カンと一突き鳴らして、山荘へと向かいます。
池の周辺で目立ってるのが、紫のヒオウギアヤメ。モミジカラマツソウの大きな葉の間から、紫の花を覗かせる様に咲いています。木道のもう片側には薄紅色の石楠花がまだ、花をつけています。お花に囲まれた木道を進んで、9:05 風吹山荘に到着です。
こじんまりとした風吹山荘の別棟には、大きなテーブルがあり
、この場所を1人100円でお借りしてブランチとまいりましょう!キンキンに冷えたビールを頼み、トロ〜リとしたカマンベールチーズをサクっとしたクラッカーに乗せていただきます。山に囲まれた神秘的な池を前に、ま〜、なんて贅沢なブランチなんでしょう!これだから、山歩きは止められまへん!
ゆっくりと過ごしてトイレに行けば、ここもきれいにお掃除されてとても気持ちの良いトイレです。紙も備えてあるのですが、宿泊者以外は「自分の紙を使って下され。余裕のない当小屋より」という、切実なお願いが貼ってあります。
ジャージーに長靴姿の小屋番さんは、姿に似合わず(失礼!)お花をよくご存知で、先のトキソウしかり、小屋下に咲く黄色い花も、オオバミゾホオズキという名前だと教えてくれます。
最後にコーヒーと紅茶でしめて、そろそろ栂池へ向かいましょう。9:50 風吹山荘出発です。先ほどの湿原を横切って蓮華温泉からの道との分岐を、今度は栂池方面へと進みます。この道は水はけが悪いとかで、梅雨時に限らず常にどろどろ・ぬるぬる状態なのだとか。リーダーいわく、「樋みたいな道や・・」。パイプを横半分に切ったような道は、イヤでも底部分を歩かざるを得ない状況で、こうなったらもうグチャグチャと泥を踏みつけて歩くしかありません。
登っては下り登ってはまた下るんかいな〜と言いながら、大体1時間ごとに休憩を入れて歩くこと3時間、大分乗鞍岳が近付いて来たな〜と思う頃、再び湿原の中に木道が現れます。栂池⇔乗鞍の道標を過ぎて、12:50 本日のコースでの最高地点 乗鞍天狗原(2180M)に到着です。
ちょっと日も射してきて、目の前の乗鞍岳にかかる雲が切れると、雪渓を歩く人の列がここからでもよく見えます。お天気が良い間にお昼を食べてしまいましょう。蓮華温泉で作ってもらったおにぎり弁当を広げて、お食事タイム。途中一瞬雲行きが悪くなって、一雨来るんではないかとヒヤヒヤしますが、しばらくするとまた雲が切れて青空が覗きます。
「このままお天気が続きそうで、良かったわね〜」と話している中、空をみながら、リーダーがポツンと一言、「そやけど、向こうにイヤな雲があるな〜」・・・。見た限りではいかにも雨降りそうな真っ黒な雲ではないのですが、少しグレーの濃い雲は確かに反対側の山向こうから、忍び寄って来ています。
そして、後でこの一言が見事、驚きの大当たりぃ〜!となるのですがそうとは知らないメンバーは、あとは快適な下りだけと、ご機嫌で記念の写真を1枚。そして13:30 栂池平に向けて出発です。
再びウネウネとした道ですが、「休憩なしでワンピッチで下りましょう」の一言で、一気に下って行きます。ほんまにこのリーダーは登りも下りも、坂の途中の休みは嫌いやねんな〜。お陰で40分ほどでロープウェイの駅の屋根が見えてきます。ここまで来ればそう汚れることはないだろうと、細い流れでストックや靴のドロを落としていると、後ろからやってきたリーダーが「こないな所で洗わんと、早よう先に行きましょう」とせかします。
まぁ、ロープウェイ駅の近くでも洗える所はあるだろうと、とりあえず歩いて駅に入ると、どこから湧いたのか人・人・人の行列。ここまで来て、ようやく今日は連休の中日なんだな〜と妙に納得してしまいます。はは〜、先ほどリーダーが先を急がせたのは、この混雑を予想してのことか・・と思っている内に、外が暗くなりいきなりのドシャ降り!そうです、天狗原で見たイヤな雲がここで追い着いて来たんですね。
お陰で濡れずにすんだメンバーはロープウェイ、ゴンドラと乗り継いで栂池高原へ降りてきます。ところがここに来て事件です!ゴンドラ途中駅、白樺駅にて10名のメンバー中6名が遭難!最終グループと思っていた4名が栂池高原についても、下山してきません。携帯に電話しても通じず、これは完全に遭難したと思い、遭難対策本部に連絡しようと思った矢先、6名が次々とゴンドラ駅から降りてきます。何でも、途中の白樺駅を終点と間違えて、お茶を飲みながらのんびり他のメンバーを待っていたのだとか・・。あ〜、ヘリ呼ばないで良かった!
というマンガのような顛末もありましたが、北アルプスに最後に残された桃源郷、山の中にひっそりと佇む風吹大池と、多くの花々を楽しんだ夏の特別例会は、雨の合間を上手にぬって、大満足の内に終わりました。
さっ、次は雨飾山へ行くぞ!!

